第46章 キスと告白と
実習を終えて、病院を出たわたしが携帯の電源を入れた瞬間のことだった。
ヴーーッヴーーッヴーーッ
電源を入れてすぐの携帯のバイブレーションが響いた。
表示画面を見なくても、誰からの着信かすぐに分かる。
「陣平くん…」
すぐに陣平くんからの連絡だと分かるように、彼からの連絡は着信音もバイブパターンも他の人と変えていたから。
わたしは震える手で通話ボタンを押して、ゆっくりと耳に携帯を当てた。
「…もしもし?」
「俺」
陣平くんの声だ…
1週間ぶりに聞く大好きな声に自然と涙が目に溢れた。
「っ…陣平くん、あのね…」
「明日、時間あるか?」
ちゃんと食べてる?ごめんね、会いたい、好き、
色々言おうとしたわたしの言葉を遮るかのように、陣平くんの声が受話器越しに響いた。
「あ…した?
うん。明日はお休みだから時間あるけど」
「明日の14時。
昔、萩と千速と4人で行った海で待ってる。
話があっから」
「え…」
「じゃあな」
プツ…
そう要件だけ言うと、電話を切った陣平くん。
話ってなんだろう。
わざわざあの海に呼び出して改まってする話に心当たりがあるとすれば
「別れ話だったりして…」
今のわたしは、何にしてもマイナス思考に陥ってしまう状態らしい。
陣平くんに会える約束をして嬉しいはずなのに、明日の14時で全てが終わってしまいそうな気もした。
もしも別れようと言われたら、その場でどう振る舞えばいいんだろう…