第44章 誕生日の夜に ☆
松田side
いつもの食卓。目の前には相変わらず可愛い俺の彼女。
これだけ見ればいつもの夕食の風景だが、今日はテーブルに並べられた料理が全て俺の手作りだというレアすぎる日。
そして俺は、いただきますをした後のミコトが箸を持ってどれから手をつけるのかを固唾を飲んで見守っている。
「陣平くん」
「!?なんだ!?」
「…そんなに見られたら、食べずらいよ」
顔を赤くして困ったように笑うミコト。
俺は悪い悪いと言いながら一度は目を逸らすが、またジッとミコトの箸の行方を追う。
いつも、俺が食べるところをミコトがじっと見つめてくるのを思い出した。
そんな見んなよ…と思いながら口に運んでいたが、ようやくミコトの気持ちがわかった気がする。
自分が作った料理を誰かに、それも好きな奴に食べてもらうのがこんなに緊張するもんだったのか…
そんなことを思いながら、ミコトがロールキャベツを掴んで口元に持っていき、齧る様子が俺にだけスローモーションにさえ見えた。
「んっ…」
「ど、どうだ?」
「おいしい!!すごい!陣平くん!おいしいじゃん!」
ぱあっと花が咲いたような笑顔でおいしいと言われると、釣られて俺の顔も心底ホッとした顔に早変わりする。
「そ、そうか!だろ?俺だってやればそんぐらい出来んだよ」
「ロールキャベツなんて、綺麗に作るの難しいのに!陣平くんはやっぱり手先が器用だね!」
そう言いながら、ミコトは美味しそうにロールキャベツをはじめ、他の料理もどんどん口に運んでいく。
「うん!このかぼちゃのスープも濃厚で美味しい…!
実はわたしより料理できるんじゃない?」
「バーカ。お前の飯の方が100倍美味いに決まってんだろ?
って、そんなこと言ったらヒロの旦那に怒られそうだけどよ」
「え?諸伏さん?」