第40章 疑惑
松田side
あの爆弾事件から1ヶ月が経過した。
世間は師走に差し掛かり、クリスマスや年末の準備に大忙しといった感じだが、警視庁捜査一課の刑事にはそのどちらも無縁らしい。
この日も出勤して早々、俺と佐藤はある殺人事件の捜査本部に収集された。
「まーた殺人かよ…この町、とんでもねぇスラムだな」
「ちょっと!ちゃんとしてよね?管理官も来るのよ!?」
一課や所轄の刑事が集まる捜査本部の椅子に座り、くああぁと欠伸をした態度の悪い俺をたしなめる佐藤。
一課のマドンナに世話を焼かせる俺を、その部屋にいる強面の刑事たちがこぞって睨みを効かせてくる。
ちょうどその時、部屋に目暮警部、白鳥警部、松本管理官がそろって入ってきて、刑事たちは一斉に立ち上がった。
「気をつけ!!敬礼ッ!!!休め!」
統率された軍隊のような一連のやり取りを、一応は警察官の俺もやってのけ、また席に座った。
しかし、どんな殺人事件なんだ…
刑事の数、尋常じゃねえほど多いぜ…
明らかに普通の殺人事件ではない様子を感じ取っていた俺だが、目暮警部が事件の概要をホワイトボードを利用して説明を始めたときにその理由がわかった。
「今朝、米花町8丁目の雑木林の中から成人男性の白骨遺体が発見された。
第一発見者は近くに住む老人で、犬の散歩中に犬が掘り起こした地面から遺体を発見したそうだ。
一緒に埋められていた所持品から、被害者は杯戸駅前のタワーマンションに住む権田原 兼続さん 45歳と判明した。」
その報告を聞いて、俺は思わず隣にいる佐藤に声をかけた。
「権田原兼続って…」
「警視副総監、権田原兼良のご子息ね…
確か、警備会社の代表取締役だった記憶が」
なるほど、そういうことか…
だからいつもの殺人事件よりも物々しい雰囲気なのか。