第35章 もう一度会いたい人 ☆
夕焼けが雲に混じって神秘的な空を見ながら、陣平くんが続けて言う。
「萩原に会って、また一緒に飲んだり、千速の携帯分解したり、同期5人でバカなことやって…
それ全部、もう叶わないなんて、残酷だよな」
陣平くんの横顔は切ないほど綺麗で、また涙が溢れた。
「萩原がいない。
ただそれだけが、こんなに寂しい。」
同じ悲しみを背負ったわたしたちは、互いが互いの傷を舐め合うようにして生きていく。
残された人間は、そうやって悲しみを背負って前を向くしかないんだ。
「…陣平くんはいなくならないで…」
「また…好きだねえそのワガママ」
「約束だよ?!」
「…ま、もし俺が危ない目にあっても、ミコトが救ってくれるんだろ?」
「っ…医者は、死んだ人間を生き返らせることはできないの!」
「だから、俺の心臓が止まる前にミコトが助けてくれるって信じてる。」
まっすぐな目をして笑う陣平くん。
わたしは陣平くんの小指に自分の小指を絡めた。
「約束する。医者になって、絶対に陣平くんを死なせない」
もう何度目だろう。
この人を救いたいと願うのは。
けれど今のわたしには、願うことしかできない。
来年の11月7日に何が起こっても、陣平くんが助かりますように。
もし自分の命と引き換えにしても、陣平くんが生きる未来を手に入れたいと願った。
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