第35章 もう一度会いたい人 ☆
タクシーが自宅に到着したのは、夜23時を過ぎた頃だった。
思えば2人同じタイミングでこの家に帰るのは、引っ越し当日以来かもしれない。
陣平くんと手を繋いで玄関の前に立ち、陣平くんが鍵を開けるのを見てた。
鍵を開ける時間さえも惜しい。
はやく家の中に入って、陣平くんにくっつきたい。
そう思っていたのが透けていたんだろうか。
鍵を回して扉を開いた陣平くんは、わたしの腕を引いて家の中に誘った。
そして玄関ドアを背にするようにわたしの身体を閉じ込めて逃げられなくしたあと、陣平くんの容赦ないキス攻撃が始まった。
「んっ……ぁ…」
息をする暇もなく陣平くんの舌がわたしの口内を犯して、そんな激しいキスとは裏腹に、彼の手は優しくわたしの髪を撫でてる。
「ん…」
「?どうした?」
「陣平くんに頭撫でられるの、好き…」
「ふ…バーカ。
…俺の方がもっと好きだ」
そう言って陣平くんはわたしの髪を耳にかけると、耳元で息を吐くように囁いた。
「ベッド行く?」
「…」
「…あ。ベッドは…やめとくか」
陣平くんにしては珍しく、昨日あのベッドで佐藤さんが寝ていたことを気にしてくれてるらしい。
まあ、わたしが返事を渋ったのもそれが原因だけど、少し迷った後わたしは陣平くんの身体に抱きつきながら言った。
「ベッド、連れてって…」
「…いいのか?」
「だって、わたしたちのベッドでしょ?」
そう言うと、陣平くんはわたしの頬に優しくキスをして、わたしの身体を抱き上げた。