第32章 寝言の理由 ☆
「はぐらかした…陣平くん、わたし以外のおっぱいも揉みたいって思ってるんだ…」
「思ってねぇよ」
「ほんとにー?!」
「あのなあ!朝からお前の身体触っただけで、もうこんななってんだよ!
お前しか興味ねえっつの…」
疑いの目を向けるわたしに、陣平くんは声を荒げながらわたしの手を取り、自分の硬くなったモノを触れさせた。
「ちょ…陣平くん…」
「なぁ…家出るまで、どのぐらい時間ある?
ちょっと手伝って…」
そう言いながらわたしの頭を撫でて頬にキスをして、何となくエッチな雰囲気に持って行こうとする陣平くん。
そんな彼のペースに巻き込まれるわたしは、陣平くんがゆっくりとキスをしようと顔を近づけてきたのを受け入れる準備をする。
そのとき、ふと壁にかかった時計が視界に入り、時刻を見てわたしは慌てて陣平くんの身体を離した。
「あー!やばい!もう行かなきゃ!!」
「え…ミコト…」
「あ!陣平くん!昨日夜に作ったカレー、冷蔵庫に入れてるから温めて朝ごはんにしてね!
じゃあわたし準備してすぐ出るから!
佐藤さんによろしく伝えといて!じゃ!!」
実習前のオリエンテーションに遅刻なんて絶対ダメ!
ただでさえ医者は時間管理が重要って口酸っぱく言われてるのに!
と、大慌てで洗面所に駆け込み、身支度を整えるわたし。
15分で洗顔、メイク、着替えまで全部終わらせたわたしはバッグを手に取り大慌てで家を出て行った。
「…何で触っちまったんだ…睡眠中の俺…」
遠くの方で、陣平くんがそう言いながらため息を吐いたのが聞こえた気がした。
昨日の夜に陣平くんと甘い時間を過ごしたおかげで、朝の忙しい時間はあの佐藤さんの「好き」を思い出さずに済んだ。
けれど、これからわたしたちの想いが複雑に絡み合っていくことを、このときのわたしはまだ分かってなかったんだ。
Next Chapter...