第32章 寝言の理由 ☆
陣平くんに抱かれた幸せのまんま、わたしは陣平くんの腕の中で眠りについた。
熟睡とはまさにこのことで、ほんの2秒しか寝てない気がしたのに、朝のアラームがわたしの耳に飛び込んでくる。
pipipipi…
「んー…」
むく…と身体を起こそうとすると、ソファーでわたしを抱き枕にして眠る陣平くんが、唸りながらわたしを逃がさない。と抱きしめる力を強めた。
「陣平くん…わたし、起きないと…離して?」
「…ミコト…ミコト…」
寝ぼけているのか、陣平くんはわたしの名前をしきりに呼びながら、あろうことかわたしの胸を両手でわしっと掴んだ。
「ちょ、ちょっと!陣平くん!?」
「んー…やわらけー…俺のミコト…」
「何言ってんの!陣平くんのエッチ!!」
思わず大きい声を出したわたしに、ビクッと身体を揺らした陣平くんはようやくお目覚めのようだ。
「あれ…ミコト…おはよ」
「おはよう。陣平くん、あの…離してくれない?」
相変わらずわたしの胸を鷲掴みにしたまま後ろから羽交い締めにしている陣平くんにそう言うと、陣平くんは名残惜しそうにそれを離した。
「やっべー…俺、無意識だった…」
「ねぇ…隣にいたのがわたし以外の女でも胸触ってたんじゃないでしょうね?!」
「………」
陣平くんは右上を向いて知らん顔をしている。
「な!ちょっと!何で黙るの!?」
「あれ?お前今日オリエンテーションだから早く行かないとって言ってなかった?
間に合わなくなるぞ」
明らかに分かりやすくはぐらかした陣平くん。
そうだよね…だって今寝ながら胸触ったもん…
一緒にいたのがわたしじゃなくて佐藤さんでも同じことしてたでしょ…!?