第31章 2人の部屋で初めての夜 ☆
外科診療のテキストを読んでいると、時間が過ぎるのはあっという間だ。
「よし…大体覚えたかな…
陣平くん、お待たせ…」
テキストをパタリと閉じて、隣で待ってる陣平くんの方を見ると、彼は待ちくたびれたのかわたしの服の袖を掴んだまま、すかーっと寝息を立てて眠っていた。
「昼間は大変だもんね…刑事さんは」
そう言いながら、眠る陣平くんの腕の中に身体を潜り込ませ、ぎゅっと抱きついてみた。
わたしが眠る瞬間に、陣平くんがいてくれるのは久しぶりだ。
「落ち着く…陣平くんの腕の中」
そう呟きながら、目を閉じて陣平くんの香りを鼻いっぱいに嗅いだ。
こんなことなら、夕食の前に陣平くんとそう言う雰囲気になった時、素直に抱かれていればよかったかな…
と、若干後悔しながらも、でもこれからたくさんそう言う時間を過ごすことができる。と思い直し、陣平くんの身体に抱きつきながら目を閉じた。
陣平くんの体温を感じながら、わたしもゆっくりと眠りに落ちていった。
そして
翌朝
「ん…」
目を開ける前に脳が起きたわたし。
まだ、陣平くんの香りがするから、今日は昼出勤なのかな…
そう思いながらゆっくりと目を開けると、目の前にいた陣平くんはいつの間にか黒のテディベアに変わっていた。
「うえっ!!??」
びっくりとして飛び起きたわたし。
え!陣平くん、熊になっちゃったの!?
なんて、寝ぼけた頭であり得ないことを考えていると、陣平くんからメールが届く音がした。
「なに?」
慌ててそのメールを開くと
そのクマ、俺のシャツ着せてっから、俺が留守の間はそいつが俺の代わりな
そう書いてある。
「…確かに、陣平くんに似てる!!」
と、そのテディベアが突然めちゃくちゃ可愛く見えて来て、わたしは陣平くんのシャツを着てるその子をぎゅーーっと抱きしめた。
わたしが寂しくないように、色々考えてくれてるんだ…
ほんと、ああ見えてちゃんと優しいんだから。
陣平くんの不器用な愛情を感じながら、わたしはそのテディベアを抱き上げた。
「ね?陣平くん」
その子の名前を陣平くんと呼び、口にキスをするわたし。
夢の同棲生活はまだ始まったばかり…
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