第31章 2人の部屋で初めての夜 ☆
IKEAで買ってきたベッドを2人で組み立てた。
陣平くんは手先が器用で、何でも分解しては戻すのが趣味。
それなだけあって、ベッドの組み立ても説明書無しでスイスイ進めていく。
普通なら大人2人がかりで2時間はかかるところ、ほとんど陣平くん1人で1時間で組み立てが完了した。
わたしはと言えば、必死で組み立てる陣平くんの背中におぶさるように抱きついて、すっかり彼の邪魔をしていた。
「陣平くん、1人で組み立ててすごーい!」
「お前…ちょっとは手伝え!」
「はぁい…じゃあダイニングテーブル組み立ては手伝う!」
そう言って、買ってきたダイニングテーブルとチェアのセットが入っている段ボールを開けようと、カッターを手に取ると陣平くんが即座に取り上げる。
「カッターは指切るといけねえからダメ」
「ええ!?カッターどころかわたしメス握る外科医なんだけど!」
「まだなってねぇだろ!
お前、そそっかしいのに絶対ダメだ」
そう言ってわたしにカッターを持たせてくれない陣平くん。
仕方ない。ネジを占めるためのドライバー係でもしよう。と、プラスドライバーを握りしめ、陣平くんが段ボールを開けるのを待っていると、今度はそのプラスドライバーを取り上げられる。
「これも俺がやる」
「ええ!?ネジ閉めるだけだよ!?」
「ネジ閉めるのに力がいるからな。
か弱いお前じゃ無理だ」
「む…じゃあ、ここ抑えてるね?」
そう言って陣平くんがネジを占めるダイニングテーブルの脚を手で支えると、また陣平くんがダメだと言ってくる。
「ダメだ。万が一、脚が倒れてきてお前が怪我したらどうするんだよ」
「手伝えって言ったの陣平くんでしょ?!」
「…さっきみたいに後ろから抱きついててくれ。
そっちの方がやる気出る」
陣平くんにそう言われ、わたしはすごすごとまた陣平くんの背中にぎゅっと抱きついた。
「手伝えって言ったくせに…」