第29章 この部屋で過ごす最後の夜 ☆
愛なんて言葉じゃとても足りないぐらい、ミコトが大切だと素直に思った。
「ミコト。」
「なに?」
「一生、一緒にいろ」
そんなぶっきらぼうで独りよがりな言葉しか紡げねえ俺を、ミコトは優しく笑ってくれる。
「ふふっ…命令系なの?」
「…悪いか?」
「…ううん。
ずっと、陣平くんと一緒にいる」
ミコトは幸せそうに笑うと、俺の髪を撫でる手の感覚を辿りながら、再び瞼が落ちていった。
なあ、萩…
俺はこれまで、「ずっと一緒」なんて言葉死んでも言うかよと思ってた。
「ずっと一緒」はあり得ねえと、お前が死んだ時に身をもって思ったからだ。
でも、ミコトといるとついそれを信じてしまいそうになる。
ミコトとずっと一緒にいる未来が来ればいいのにと、心の底から願ってしまう。
お前の妹は俺に、一体いくつ新しい感情を教えてくれるんだろうな。
そんな風に萩に語りかけながら髪を撫で、俺は愛しい彼女の寝顔を眺めた。
俺がこの先守っていくと誓った、愛しい寝顔を。
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