第27章 2ヶ月分の大好き ☆
陣平くんと最寄駅で待ち合わせをした。
会うのは1ヶ月ぶり。
一緒に住もうと言ってくれたあの夜以来だ。
幼馴染で、見慣れているはずの陣平くんの姿を探しながら駅で待っている時、胸がドキドキとうるさかった。
今日は明日まで一緒にいられる?
もしそうだとしたら、2ヶ月ぶりに陣平くんと夜を明かすことになる。
2ヶ月ぶりに、する…?
早く陣平くんに触って欲しい。と思うわたしは、頭のネジがどこか行ってるんだろうか。
少し前にアユに言われたことを思い出した。
欲求不満なんでちゅか?ミコトちゃんは
その通りだ…欲求不満
そして、欲張りだ。
陣平くんと付き合えるだけでいい。
彼が生きてるだけでいい。
そう思っていたくせに、今は1秒でも早く彼に触れたいと思ってる。
どんな名医にも治せない、陣平くん病だ…
はああ…と自分の陣平くんへのゾッコン具合にため息をついていると、人混みの中から大好きな彼の姿を見つけた。
スーツを着て、黒いネクタイ。
サングラスをした彼は、1ヶ月ぶりに会うとさらにまたカッコ良くなってた。
陣平くんはわたしを見つけると、サングラスをずらしながら駆け寄って来る。
その姿も、余すところなく格好良い。
「悪いな。待ったか?」
「ううん。…会えて嬉しい…」
手を伸ばせば陣平くんに触れられる距離で、わたしは思わず彼に抱きつこうとした。
けれど、陣平くんはわたしの身体をグッと引き離して目を逸らす。
「…ほら、早く行こうぜ。
腹減った」
「う、うん…」
どうして?
夜中に会いにきてくれた時は、会ってすぐに抱きしめてくれたのに。
陣平くんに会いたくて、触れたくて仕方なかったのはわたしだけだった?
手すら握らずに、前を歩く陣平くんの背中は、1ヶ月前より大きく、逞しく感じた。
これからは一緒に住んで、陣平くんがそんな風に逞しくなって行くところを、そばで見られるんだよね?
近くで、陣平くんと一緒にいられるんだよね?
そう思いながら陣平くんの背中を見つめてた。
触れたい。
何度もそう思いながら。