第22章 ゲレンデに溶ける恋 ☆
年末
久しぶりの休みを取れた陣平くんと、鍋を突いているとき、陣平くんが徐にわたしに封筒を手渡した。
「ん。」
「?なにこれ?」
「開けてみろよ」
ぶっきらぼうにそう言われるがまま、封筒の中身を見るとそこには新幹線のチケットとホテルの宿泊券が入っていた。
「これ…!」
「年越し、旅行行こうぜ。スノボしてカニ食いに。
31と1だけ奇跡的に休みが取れたからよ」
「りょ、旅行!?スノボ?!カニ!?」
その単語どれもが信じられず、ガタッと立ち上がったわたしは、思わず大きな声で陣平くんが言った言葉をリピートする。
「なんだよ。
さすがに大学も休みだろ。
お、うめぇなこの肉団子。」
「休み!休みだよ!休みです!
行くー!!」
わーい!と両手バンザイしながら、わたしは大喜び。
何と言っても、陣平くんと初めての旅行!
しかもカニ!!スノボ!!!
こんなメモリアルな年越しある?!
去年は陣平くんと手を繋いで初詣に行った。
それだけでも十分幸せだったのに、今回は旅行…
考えただけで顔がニヤニヤとふにゃける。
そんな不審者の目の前で平然と肉団子を口に運ぶ陣平くんに、わたしは目を丸くして尋ねた。
「でも、どうして旅行準備してくれたの?」
「…お前の今年の誕生日、俺仕事で何も出来なかっただろ?」
「でも、ちゃんと当日におめでとうって言ってくれたじゃん」
「電話でな」
「電話だけで、嬉しかったよ…?」
「…俺の気が済まねぇんだよ。電話だけじゃ」
陣平くんは、何も考えていないように見えて、実はわたしのこといつもずっと考えてくれてる。
それが垣間見える瞬間が、1番彼を愛しく思う瞬間だ。
1年経っても、何年経ってもきっとずっとこうして陣平くんに恋をしているんだろう。
「嬉しい!わたしスノボ初めてだから教えてね」
「任せろ」
あぁ!楽しみすぎる!
絶対風邪引かないようにしなきゃ…!
ウェア、アユに付き合ってもらって買いに行こう!可愛いウェアで陣平くんをずきゅんとさせてやる!