第21章 酔っ払った萩原妹 ☆
お兄ちゃんの命日が過ぎてしばらくすると、街はクリスマスの飾り付けに彩られ、忘年会のシーズンがやってきた。
今日は学部の仲良しメンバーが集まり、最寄駅近くの肉バルで忘年会だ。
「今年も一年、授業に解剖に試験に単位、色々とお疲れ様でしたー!!
かんぱーい!!」
アユの乾杯の音頭で生ジョッキがいくつも重なり、カンッといい音がした。
そして、みんな一気にジョッキに入った生ビールをゴクゴクと喉に入れていく。
「っはー!うんま!」
ビールの泡を口につけたまま、至福のひと時を楽しむわたし。
この可愛さのかけらもない姿は陣平くんにはとても見せられない。
隣で見ていた新出くんが、呆れたように笑いながらわたしの口元についた泡を拭った。
「萩原さん、意外と豪快にお酒飲むんだね」
「そっか!新出くんと飲むの初めてだもんね?」
タイムスリップする前のわたしは、よく新出くんと飲みに行ってたから、うっかりボロが出ないようにしないとな…
そう心に留めてまたビールを口に運んだ時、
「ねぇミコト!これも飲んで見なよー!美味しいよ?」
と、お酒大好きなアユは見た目はアイスティーに見えるお酒をわたしに手渡してきた。
「なにこれ?」
「ロングアイランドアイスティー!
紅茶みたいでゴクゴク飲めるよー」
そう言われ、一口口に運ぶと本当に紅茶の味がする。
「ほんとだ!」
飲みやすいそのお酒、中身はウォッカベースのかなり度数の高いものだったようだ。
けれどわたしはそのことに全く気付かずに、飲みやすいのをいいことにどんどん飲み進めていく。
これほんとに美味しい…!!
と、場の雰囲気にも飲まれ、そのお酒を3杯飲み干したところでゆっくり視界が揺れた。
「あ…れ」
目の前がぼやけ、気づけばわたしはテーブルの上に突っ伏して倒れた。
そして遠くの方でわたしの名前を呼ぶ声が聞こえる。
「ミコト?ミコトー!」
アユが呼んでるーと思ったのを最後に、わたしは気づくと意識を手放していた。