第16章 ある夏のはじまり
「ん…」
陽の光が差し込んできて、わたしは目を覚ました。
どうやら昨日、陣平くんに腕枕をしてもらいながら気付いたら眠っていたようだ。
ぱち…と目を覚ますと、陣平くんはもう起きていて腕枕をしながらわたしの寝顔を眺めていた。
「陣平くん、早起きだね」
「早起きっつーか…」
「?」
「いや。何でもねぇ。
ふわぁああ」
何でもないなんて言いながら大きなあくびをした陣平くんは、わたしの身体をぎゅっと抱きしめた。
「??」
「ほんと、お前は小悪魔だな。
マジでタチ悪い」
「え?何の話??」
「いやこっちの話。
で、腹はマシになったか?」
陣平くんの大きな手がわたしの下腹に重なり撫でてくれたとき、わたしはハッと思い出した。
生理と言えば、プールに誘おうと思ってたんだ!!
「陣平くん!プール行かない?」
「…お前行けねえだろ」
「や、来週の話!
むしろ今生理来たから予定立てやすくなったよ」
そんな風に楽観的に笑うわたしを見て、陣平くんは呆れたように笑った。
「いいけど、俺とプール行って楽しいか?
ダチと行った方が楽しめるんじゃねぇ?」
「陣平くんと一緒に行った方が楽しいに決まってる!」
「あ、そう。
…まあ、俺の知らねえところでどっかの誰かにお前の水着姿見られんのも癪だしな。」
そう言いながら陣平くんはわたしのおでこにキスをした。
陣平くんとプールに行ける!!
それが決まっただけで、わたしは途端に腹痛も忘れて上機嫌になる。
「やったあ!ありがとう陣平くん!
うれしい!!」
そう言いながら、ぎゅーっと陣平くんに抱き着こうとすると、陣平くんは焦って身体を離す。
「ちょ、待て。あんまくっつくな」
「えー?なんでえ?いいじゃんー」
拒否されてもめげずにぎゅむっと抱きつくわたし。
わたしが抱きつくだけで陣平くんの身体に異変が起きるってことを、わたしはまだ知らないままだった。
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