第3章 死ぬということ
2年後
わたしは大学2年生になった。
それと同時に、お兄ちゃんと陣平くんは警察学校に入校。
高校2年で陣平くんに振られたわたし。
失恋で傷んだ心をなんとか紛らわせたくて、時間が有ればひたすら勉強に打ち込んだ。
勉強して、知識を頭に入れている間は忘れられた。
陣平くんのことを。
あの日、ごめんと言った彼の顔を。
その甲斐あり、わたしは東都大学の医学部に現役で合格した。
医学部を受験したのは、単純に1番難関だったからだ。
目標を叶えるために、必死で勉強している間だけ、唯一陣平くんを思い出さずに済んだから。
大学の授業は楽しかった。
お兄ちゃんはよく、食いっぱぐれない職業といえば警察官
なんて言ってたけど、医者こそ食いっぱぐれなさそうだ。
現に年々医者になりたい人は減ってるし、女の医学生は数%しかいない。
今日は、無事に警察学校を卒業して晴れて警察官になったお兄ちゃんが実家を出る日だ。
「お兄ちゃんー!荷物これで全部?」
「ああ。忘れてるものあったら、また取りに来るから」
忙しい家族の中で唯一、お気楽な大学生だったわたしは、お兄ちゃんの引っ越しを手伝うことになった。
お兄ちゃんが運転する車に乗り込み、これから一人暮らしをするマンションへと向かう。