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【R18】evermore 【DC/松田陣平】

第2章 初恋のはなし




次の日、帰り支度をしたあと、BBQで使った備品を、キャンプ場まで返しに行こうとした時、陣平くんがわたしが持っていた備品をヒョイっと持ち上げた。


「ミコト!昨日ぶっ倒れたくせに、こんな重いもの持ってんじゃねぇって」


そんないつもの陣平くんの優しさが、今のわたしには氷のように冷たく心に刺さる。


「大丈夫だよ。持てる。子供じゃないんだから」


そんな風に言って、陣平くんが持ってくれた備品をまた取り返し、わたしはズンズン前に進んでいく。


「ミコト。何怒ってんだよ」

「…怒ってないよ」

「っていうか、またそんな短いスカート履いて。
膝出すなって言ってんだろ?」


短いミニスカートを履いていたわたしを見て、陣平くんが言う。

トクンと胸が高鳴ったのが悔しくて、わたしは思わず陣平くんの手を払い除けながら、声を荒げた。


「っわたしじゃないなら!
…もう…優しくしないで…」

「何言って…」

「優しくされると、辛い」


そう言いながら目に涙を溜めて陣平くんを見るわたしに、陣平くんが困惑と苛立ち両方持ち合わせた声で言う。


「…意味わかんねぇ。」

「陣平くんのことが、好きなの!」


どうしてわからないの?
そう思った瞬間、好きだという尊い言葉を投げ捨てるように言った。

初めての告白が、こんな形になるなんて。

即座に後悔したのに、解き放った言葉はもう元には戻せなくて、8年分の想いはこんなもんじゃないのにな…なんて、タイムマシーンに乗ってほんの数秒前に戻りやり直したくなった。

陣平くんは、少しだけ困ったような顔をして、ゆっくりと口を開いた。


「俺も、ミコトのこと好きだぜ?
けどそれは、妹としてだ」

「妹妹って、お姉ちゃんのことは女として見てるくせに」

「…ごめん」



ごめん


それが、陣平くんに出来る、精一杯の誠意だったようだ。




この日から陣平くんは、うちに一度も来なくなった。

お姉ちゃんが警察学校に行き、わたしが高3になっても。
お兄ちゃん達が警察学校に入学して、わたしが大学生になっても。


陣平くんは、一度もわたしの髪を撫でなくなった。


陣平くんと再会するのは、陣平くんが警察官になった後のこと。


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