第14章 桜の木の下で ☆
桜の花が芽吹く、春がやってきた。
今日は久々に陣平くんが1日お休みだから、2人でお花見に行くことになっている。
未だ実家暮らしのわたしは、朝起きて家族の台所でいそいそとお弁当の準備を始めた。
卵焼きを焼いて、ウインナーをタコさんに切っていると、後ろから手が伸びてきて卵焼きを一つ盗まれた。
「あっ!お姉ちゃん!」
振り返ると、起きたばかりの姉がわたしの作った卵焼きをもぐもぐと食べている。
きっと、お兄ちゃんがいたら同じようにつまみ食いしていただろうな。
似たもの同士。さすが姉弟だ。
「ん!うまー!腕上げたな!ミコト!」
「でしょー?
好きな人の胃袋を掴もうと必死で練習したから!」
「で、見事に胃袋を掴めたってわけか。
めでたいねぇ」
そう言いながらお姉ちゃんはニヤニヤと笑った。
「ねぇー、そんなこと言うなら手伝ってよ!
お姉ちゃん、そこのミニトマトとモッツァレラをピックで刺して?」
「しょうがねぇなー」
やれやれ。なんて言いながらも、お姉ちゃんは隣に立ってわたしの言った通り手伝いを始めてくれた。
「陣平とどこ行くんだ?」
「お花見。で、そのあと陣平くんのおうちに…お泊まり」
「あのヤロー、もうすっかりミコトに手ェ出してるのか。」
「…いいじゃん。
わたしが、手ェ出されたくて行ってるんだから」
そこまで言うと、自分でも恥ずかしくなってきて、かあっと顔を赤くした。
そんなわたしを見て、お姉ちゃんは優しく笑う。
「ごめんごめん。
楽しんで来いよ?陣平となら、私も安心だよ」
「うん…ありがと。お姉ちゃん」
そんな会話をしながら、わたしのお弁当がどんどん出来上がって、早く陣平くんに食べてもらいたい!
そんな待ちきれない気持ちでいっぱいだった。