第12章 大人の階段 ☆
翌朝
太陽の光がホテルの部屋の大きな窓から差し込んできた。
「…ん…」
眩しくて目を開けると、昨日散々愛し合った窓際が目に入り、思わずかあっと顔が熱くなる。
寝返りを打ち、反対の方向に身体を向けると、すーすーと寝息を立てて眠る陣平くんがいた。
「陣平くん」
「ん…」
名前を呼ぶと、寝起きの悪い陣平くんはうーんと唸りながらわたしの身体を抱きしめ直した。
「陣平くん。大好き」
そう言いながら彼の腕の中にぎゅっと抱きつくと、陣平くんの匂いがした。
ねぇ陣平くん。
このまま時間が止まればいいのにって思うよ。
どうしたら、あなたを救えるのかな?
どうすれば、ずっと陣平くんの隣にいられる?
そこまで考えると、涙が溢れた。
幸せを感じる分、怖い。
きっとこれから陣平くんと時を過ごせば過ごすほど、こんな感情になるんだろう。
泣いてちゃだめ。
強くならなきゃ。
そう思いながら鼻をズッと啜ると、陣平くんがぱち…と目を覚ました。
「ミコト?どうした?」
「え…陣平くん、わたしが名前呼んでも起きなかったのに…」
「…お前が泣いてる音がしたから。
何泣いてんだよ」
「…幸せで」
そう言うと陣平くんは笑いながら言った。
「泣き虫だねぇ。いくつになっても」
そして、わたしの瞼にキスをする。
極上の幸せをめいっぱい感じた、ハタチになって初めての朝だった。
NentChapter...