第8章 叶わぬ願いと叶った想い
次の日、朝起きたわたしは慌てて隣を見た。
隣ではお兄ちゃんがすかーーと寝息を立てて眠っている。
携帯を確認すると時刻は6時。
日付は7年前のままだ。
良かった…まだ過去に戻ったまま…
ホッと胸を撫で下ろしたあと、お兄ちゃんを起こす。
「お兄ちゃん!!」
「んー…早いな、ミコト」
「お兄ちゃん!11月7日、仕事休んで!!」
唐突に休めと言われた兄は、目を擦りながらわたしの頭をぽんぽんと撫でた。
「11月って…来月はもう休めないよ」
「だめ!!!休んで!!」
わたしがものすごい剣幕で言うものだから、兄は驚いてわたしを見た。
あの日、現場に行きさえしなきゃお兄ちゃんは死ななかった。
「11月7日、わたしとトロピカルランドに行こう!」
「お前のわがまま、久しぶりだな」
お兄ちゃんは呆れたようにため息をついた。
やっぱり無理なのかな?
もし無理なら、当日お兄ちゃんの家の鍵を閉めて外に出さないと言う強硬手段をとるしかない。
無茶苦茶なことを考えるわたしを見透かしてか、お兄ちゃんが優しく言った。
「わかったよ」
「え?」
「7日な。トロピカルランド行こう。にいちゃんと」
思った以上にすんなりと上手くいった作戦に、わたしは一瞬頭が真っ白になったけど、ハッと思い直した。
これで、お兄ちゃんを救うことができる…??
「絶対!絶対だよ??」
まるで小さい子供みたいに指切りゲンマンをするわたしを、お兄ちゃんが優しい瞳で見た。
絶対に死なせない。
お兄ちゃんはわたしが守るから。
そう強く強く願いながら、仕事に行く兄を見送った。