第2章 アイツは、あぁ見えて甘えん坊 ( 隠の後藤 )
「 なんか…多神さんって、怖くないっすか? 」
「 あー、なんでだ? 」
あれから、多神は手を出してくることはなかった。
゙発情期 ゛ってやつだったらしく、
ムズムズしてたのが無くなったと一人で喜んでいたが、アイツの笑顔を見てるとどうでも良くなった。
俺も態々、男に抱いてほしいって趣味は無いし
元々、アイツの役に立つならなんでもいいから特に深く考えてはない。
同じ隠のやつが、3日で怪我が治った事で剣を持って素振りしてる多神を見て呟いた言葉に、彼をじっと見てから、布の下で軽く笑う。
「 なわけ、アイツはあぁ見えて甘えん坊なんだぜ 」
「 嘘!?そうなんですか?? 」
その場を離れて歩き出せば、驚くようについてくる隠の言葉に軽く笑う。
どんなに月日が経とうとも、アイツが俺の前だけで見せる表情は誰も知らないだろう。
「 義勇〜 」
「 ……ん? 」
いや、普通に…見せていたけどな。
ふっと、後日…
様子を見に来たら、年下の冨岡さんに抱き着いてるアイツがいた。
それも犬のように尻尾をブンブン振ってる様子にイラッとすれば、俺より先に錆兎が来る。
「 おい!また男に抱き着いてるのか!いい加減にしろよ 」
「 いいじゃんか、義勇は俺の事が好きだもんなー? 」
「 …(犬が)好きだ 」
「 犬じゃねぇだろ!狼だろうが! 」
「 じゃ、犬になるさ 」
引き離され、離れると同時にバク転すると同時に服を着た狼の姿へと変化したアイツに、冨岡さんは目をキラキラされてるが、錆兎さんは眉をピクつかせ剣を抜く。
「 いいだろ、今日こそ…毛皮にしてやる 」
「 お、出来るものならやってみろ 」
逃げる狼、追う兎…
普通は逆じゃないかって思うが、いつもの光景の為に見慣れてしまった。
胸に感じていたモヤは、狼が俺の後ろに来て隠れた事でなくなる。
「 後藤助けて〜 」
「 なっ!?俺には無理だろ?? 」
「 ほぅ…そのまま動くなよ。2人纏めて切ってやる 」
「 いや、俺は関係無くねぇ!? 」
柱ってことは彼等には言ってないみたいだから、力加減も誤魔化してるのは知ってる。
焦る俺、笑う多神、殺意のある錆兎、ポケーと見てるだけの冨岡、
これからも、俺達はよく一緒にいることが増えていくんだろうな。
だからそれはちょっと嬉しいんだ。