天命と共に 【文豪ストレイドッグス】 サンプル小説
第1章 序章
武装探偵社の扉を叩いた俺が初めて見た人物は黒く、長い髪の毛を靡かせた女性だった
「あら、お客様ですわ」
彼女は事務員だろう
俺の対応をするためか、女性らしい軽やかな足音を立てて、俺の前に立った
「此処は、武装探偵社で間違いないよな?」
「えぇ、そうですわ!」
可愛らしい笑顔で対応してくれる女性に俺は伝える
「……依頼を頼みたいのだが、善いだろうか?」
「えぇ、よろしいですわよ! こちらへどうぞ〜」
俺を先導するように歩みを進める
彼女とは初対面ではあったが、俺は知っている
簡単な話、ここへ来るにあたって、下調べをしていたからだ
ーーこの女性の名は、谷崎ナオミ
第二の性別はβ、前職は学生、異能力はないが、彼女には同じ組織内に兄が1人居るという
彼は彼女とは違い、正式な社員なので異能力があるらしい
「あの、」
「はい?」
谷崎妹の声に我へと返った俺は徐に顔を上げた
「どのようなご依頼で?」
「嗚呼……それがだな、」
簡易的に依頼内容などを説明、谷崎妹は俺の内容を逐一確認しながら、筆を走らせてゆく
確りしている人だ
学生を卒業したばかりだろうに自立している彼女に感心していると……
「此方ですわ」
彼女が上品に指し示した場所は応接室だろうか、その一角にある椅子を勧められた
勧められるまま、椅子に座ると同時に谷崎妹とは違う声がした
「どうぞ、」
「嗚呼……有難う、」
静かな音と共にテーブルに置かれたのは、茶の入った湯呑みであった
顔を上げると谷崎妹の隣で微笑む茶色の髪に、赤い眼鏡が特徴の女性が居た
「皆さん、仕事で……多分、もうすぐ帰って来ると思います……少々、お待ち下さいね」
ーーこの女性の名は春野綺羅子
第二の性別はβ、彼女も事務員で、社長秘書だと言う
「いえ、押しかけたのは俺なんで……こちらこそ、すみません」
2人が此方へ再度視線を向けて、楽しそうに、笑みを浮かべて何やら会話をしながら、向こうへ行ったのを確認すると、俺は笑みを浮かべるのを止めにして表情を戻した
そして、テーブルの上に置かれた茶に手を伸ばした俺は早速頂くことにした
「……あちっ、」
少々、お茶にしては熱い気がした