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ラヴレター─君が遺した日記─

第3章 彼女の真実


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死ぬのが怖くない人間なんて

本当に居るのだろうか


少なくとも、智子はそんな人間ではなかった


彼女は

口では「覚悟はとっくに出来ている」なんて言っていたけど


本当は

怖かったんだよね





君が、その弱気を口にしたのは

たった一度だけだったけれど


僕はその日の事を

今でも、鮮明に覚えている


あの日ほど、自分の無力さを呪って

切なさに、胸が張り裂けそうになった事はなかった





君が“怖い”と言う言葉を初めて口にした

あの日ほど…








「じゃあ、またね」



そろそろお父さんと鉢合わせる可能性のある、グレーゾーンな時間帯に突入したので

僕は立ち上がって彼女にそう言った



「……ん」



彼女は、僕が立ち上がると

決まって僕に向けて“ハグして”って言わんばかりに両手を広げる


僕は、その可愛らしい仕草に微笑みながら、彼女の痩せた体を優しく抱き締めて

その小さな赤い唇に、キスをする


そして、もう一度


「また、ね?」


と言って、体を離す


だけど智子は、決して僕の言葉に応える事はしなかった


ただ、にっこり微笑んで、手を振るだけ


僕はその日何となく、帰り際にその事について訊いてみたくなった


何故「またね」と言う僕の言葉に

君が何も応えないのかを



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