第3章 彼女の真実
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「お代わりは要るかい?」
喫茶店に入って、君が遺した日記を読み始めてから
一体どれ位経っただろうか
コーヒーの残りカスがすっかりカサカサになったカップを持ち上げて、マスターが言った
「すみません、コーヒー一杯でこんな粘って…」
「そう言う意味で言ったんじゃないよ。
一時間もそんなして熱心に読んでたんじゃ、のど乾くんじゃないかと思ってな」
(一時間…そっか、まだそんなもんか)
僕は店内の時計を見た
レトロな雰囲気の壁掛け時計の針は、もうじき二時を指すところだった
「でも、そろそろ混む時間なんじゃないですか?」
「はっはっはっ!
未だかつてこの店が混んだ事なんかありゃしないよ」
マスターは窓に目を向けると続けて言った
「それに、この雨だ。客なんか来やしないよ」
「……はぁ」
そんなんで商売が成り立つのだろうか何て、余計なお世話なことを考えていたら、マスターが言った
「俺の奢りだ、もう一杯飲んで行きな」
「えっ?…でも…」
「コイツもたまには使ってやんないとな」
マスターはエスプレッソマシンの上に手を置くと
また、ウインクをした
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