聖夜はアナタの好きにして【鬼滅の刃/上弦の鬼短編】
第2章 覚めない夢
目覚めたら、柔らかいシルクのシーツの上。
目の前には無防備な大好きな人がいる。
なんて幸せだろう。
長い髪が端正な顔を遮るのが邪魔だとそっと形の良い耳にかけてあげると少し表情が緩んだ気がした。
ふわりと同じシャンプーの匂いがするのも胸に甘ったるい喜びが込み上げてくるのが嬉しい。
しばらく、そのまま。少年のような無防備さを思わせる綺麗な寝顔を堪能していると、目覚める前か大きく息を吸ってゆっくりとルビーのような赤い瞳が姿を現した。
「おはよ。」
「.....んん.....。」
昨日誰よりもたくさんのお酒を飲んだであろうこの人は、なかなか寝起きが悪く、いつもカッコよくて隙が無いのに、ぼんやりした朝の姿は堪らなくかわいい大型犬のよう。
世の中でこんなカッコいい人のこんな姿を見られるのは、わたしだけであってほしい。
そんな想いを強くして、寝起きでまだ覚醒してない体に抱き着いた。
「.....綾乃。朝からどうした.....。」
剣道とジム通いで鍛えたらしい逞しい腕がわたしを抱いて、大きな手で頭を撫でる。
窓から差し込む日差しは真っ白な部屋を柔らかい眩しさで包んで天国みたい。
「心臓の音...。幸せ...。」
急に何か彼の何かに触れたみたいで空気が一変する。
気付いた時には目の前にお目覚めになった大好きな人と天井。
その瞳は奥の方で熱をもって、下腹部には堅く隆起したものが当たる。
「まだ、服着ていなかったな...。」
「巌勝?もう朝よ?.....ちょっと!」
「お前が、可愛い事をするのが悪い.....。」
「そ、そんなっ.....」
理不尽なという言葉をあつい唇に飲み込まされて、脳も体も痺れては溶かされる。
甘い快楽に理性が抗えるはずもなくそのまま愛を受け入れて、堕落した朝を一緒に過ごすのもいい。
そんな甘えた思考を許せるのもお互いが今日休みだということに他ならない。
黒死牟が巌勝であるとき、彼に映る女はわたしだけになる。
そう信じているのもこんな表情をいっぱい見せてくれては、疑うのが可笑しいくらいに言葉も行動でも示してくれるから。
「綾乃、愛してる...。」
「わたしも...。」
あぁ、優しい眼。
わたしたちは、再び絶頂を迎えて抱き合って、眠りの世界に身を堕とした。