第2章 出立
高速に乗って1時間ほど走って。
彼は話しも面白くて、職場や学生時代のことをたくさん話してくれたから、全然退屈なんてしない。
サービスエリアにつくと、車を駐めたところで運転席の健吾さんが真面目な顔をして。
「志保さん、左手を出してください」
左手を上向きに差し伸べられたので、なんだろうと思いながら左手をそっと重ねる。
「この指輪、明日まで預かっていいですか?」
左手でそっと掴まれて、右手の指で私の結婚指輪を撫でている。
「家に帰るまで、他の事は全部忘れて欲しいんです」
教会で誓った、あの人への愛の証。
あの時から外したことはないけど。
「…はい、明日、帰るまで。健吾さんに預けます」
彼は嬉しそうに微笑むと、そっと私の指輪を抜きとった。