第11章 夫婦
健吾さんの手が止まって、枕元に置いていた私のスマホを手に取った。
「…旦那さんですね。出て下さい」
「で、でも…」
「おれのことは気にしないで。…意識がちゃんとしてるうちに、おやすみなさいを言っておいて下さい」
確かに、始めちゃったらあたまパーになっちゃうから、今しかないかも…。
「もしもし」
『あ、やっと出た。そっちはどうだい。今日はどこにいってるの?』
「御涌野温泉。すごい旅館でね、とってもいいお部屋なの」
『友達の旦那さんが急遽行けなくなったんだっけ』
「そう。これは確かにキャンセルするのもったいないから。友達に感謝だわ」
健吾さんはここまで無言でじっとしていたのだけど、急にスマホを取り上げてハンズフリーに切り替えられた。