第19章 黎明のその先へ【END2】
「あの…?どこに?」
月城が小走りでついてきながら言う。
人目のつかないところへ。
そう言えば逃げられてしまいそうだから言わなかった。
高い建物の隙間に入り、いよいよ道とは言えない所にくると、おかしいと思われたようで手を引き剥がそうとしてきた。
それを拒むように握る力を強める。
「ちょっと…!離してください、痛いです!」
「む…すまない…。」
しかし離せば逃げ出しそうな雰囲気だ。
力を緩めたとたんに、手を強く引き抜こうとするのだから。
足を止めて向かい合う。
「手を離すから、俺についてきてくれるか?」
なかなか目を合わせようともしてくれないので、顔を覗きこんでしっかり目を見た。
青が泳いでいる。
「リアネ」
「…分かりました。そもそも貴方から逃げても逃げ切れるわけがないです。」
まぁ、それはそうだがな。
不安そうにしている月城に微笑んで、パッと手を離した。
するとどうだ。
彼女はその瞬間に元来た方へ走り出して、あっという間に逃げ出すではないか。
そこまで嫌がられるとちょっとくるな…。
だが俺から逃げ切れるわけないと分かっていただろう。
すぐ追いつき、肩に担いで連れ戻す。
流石の彼女ももう抵抗しなかった。
俺に担がれながら頬杖ついてため息をこぼす始末。
そのまま細い裏路地へ連れていき、彼女を降ろすと建物の壁と俺との間に閉じ込めた。
「あの…」
怯えてというより、戸惑っているようだった。
そわそわしていて視線が定まっていない。
「ここは人が通らない…大丈夫だ。」
担当地区内だ。鬼を探すため、人目のつかない場所ほどよく知っている。
顔を近づけると月城の匂いがした。
それがまるで麻酔を打ったときのように、思考を鈍らせる。
何も考えずに求めたい。
唇が触れそうなほど顔を近づける。
避けられるかと思ったが月城は動かなかった。
例え嫌がろうとも今は関係ないがな。
そうして、喰らいつくように口付けた。