第12章 12、結婚報告
『んで、これから会うのが武装探偵社の社長ね。』
転校してきた後の学校案内みたいに軽い気持ちで案内する私の彼氏。これから結婚報告だっていうのに、、、。
「しゃ、しゃちょう、、、。」
『そんな背負い込みすぎなくても大丈夫だよ。たぶん社長はゆめの事気にいると思うし。』
「そうなの、、、?」
乱歩、気抜きすぎじゃない、、?
夫になる人の社長に結婚報告だよ!?
うぅ、変な汗出てきた。
乱歩が扉をノックする。
現実を見れない私に見合わず、乱歩はのんびりした声で、
『しゃちょー、連れて来たよー。』
扉が開くと、対立する形に作られた椅子に座る男性がいた。
社長と言うにはまだ若く見える。眼力が痛い。
『そうか、それではこちらに。』
低くて渋い声が私たち二人を案内する。
その、人に向かい合うように乱歩と一緒に座って。
『乱歩の親のようなものをしております、福沢諭吉と言います。』
余り人馴れはしていないのか、それともこう言った場面にあった事が無いのか、ぶっきらぼうだけれど優しい言葉が降りかかる。
『乱歩から常々聞いておりました。素敵で身にあまるほどの恋仲が出来たと。』
社長である福沢さんと目が合う。
眼力は凄いが、その奥はとても優しい。
「そ、そうなんですね、、、。」
言われた言葉の意味に気付き、恥ずかしくて思わず乱歩を見ると、何時になく真剣な眼差しで福沢さんを見つめていた。
『、、、私では怖がらせてしまうだろうから、ひとつだけ。』
『乱歩を、よろしくお願いします。』
深々と下げた頭に続いて、肩にかかった襟足がするりと滑る。
お辞儀をされたのだと理解して慌ててこちらもお辞儀をする。
あぁ、本当に結婚するんだ。
思わず目が熱くなってしまう。
「、、、はい!こちらこそ、乱歩さんと素敵な日々を紡いでいきます。」
『しゃ、、、福沢さん』
白い小さな花がぽわぽわと舞いそうな幸せの空間に、乱歩の声が割って入った。
『どうした、乱歩?』
福沢さんが乱歩に目を向けている。
そして、
あの乱歩が、
深く頭を下げた。
『10数年間、育ててくれて、……ありがとう、ございました。』