第6章 浮気は男の甲斐性? の巻
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「翔?翔じゃない?」
「…え?」
俺は聞き覚えのある声に呼びとめられて振り向いた
「やっぱり翔だ!久しぶりね!」
「あ…ひ、久しぶり…」
それは、俺が智くんと出逢う前に付き合っていた彼女だった
突然知らない女の人に声を掛けられる俺を見て、智くんが明らかに不安そうな顔をした
「あ、智くん此方は…」
「翔のモトカノでぇーす!翔、この子は?お友達?」
「…え?」
Σ友達!?
(そうか…そうだよな…)
どんなに智くんが可愛かろうが、どんなに二人がラブラブだろうが
一般的に、男二人で連れ立っていて、恋人同士だなんて思う筈も無い
…ましてや、永遠の愛を誓い合ったパートナーだなんて…きっと夢にも思わないんだろう
「…うん…まあ」
俺は思わず、彼女の言葉を肯定する様な事を言ってしまった
「そうなんだぁ?スッゴク可愛い子だよねぇ!ね、彼女とか居るの?」
智くんは黙って俯いている
「が、ガッつくなよ!」
「うふふ、ゴメンゴメン!じゃあ、あたし急ぐから!今からデートなのよ」
「何だよ!自分彼氏いるんじゃん!」
「あったり前でしょ?あたし可愛いもん!じゃ、またねぇ!」
モトカノは手を振りながら行ってしまった
「……元カノさん」
「あ…智くん…」
「…僕…お友達なの?」
「いや…それは…」
「先帰る」
「さ、智くん!」
先に行こうとする智くんの腕を慌てて捕まえる
「…離して。オトモダチは先にお家に帰ってるから、翔くん一人で相葉ちゃんとこ行って」
智くんがどうしようもなく可愛く拗ねた涙目を俺に向けた
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