第17章 ロンドンからの刺客(笑)、の巻
翔くん、人間って欲張りな生き物だね
僕には、貴方って言う掛け替えのない、素晴らしい人が居るのに
自分にない物を羨んで、それが欲しくなってしまう
翔くん、僕って…愚かだよね
いくら望んでも叶わないのに、新しい家族が欲しいだなんて
出来る訳もないのに、僕らにも新しい家族が出来たら良いのになんて
…そんな事を思うなんて…馬鹿げてる、でしょう?
「智くん、どうしたの?」
ぼんやりと立ちつくす僕の肩を抱いて、翔くんが心配そうに問いかけた
「ん〜ん、どうもしないよ」
何時もの公園
今日は翔くんとのんびりデートの日
目の前を子供たちが元気に走り回っている
母親達はソレを視界の端で追いながら、世間話に興じている
何処にでもある風景
…だけどそれは、僕にとっては永遠に当事者になり得ない風景
「どうもしてるでしょ?」
優しい翔くんの声
これ以上のモノを望むなんて…僕はどうかしてる
「どうもしてないってば」
「いぃ〜や!してる!!」
翔くんは得意気に鼻を鳴らすと、高らかに宣言した
「智くんの事は何でもお見通しなんだから!」