第12章 しのぶと呼ばれたの~♪、の巻
「ワシは、一目で虜になっての…毎日の様に忍に逢いに行った」
「…うん」
「それこそ、毎日食事に誘い、お買い物に誘い、ホテルに誘い…」
「…(最後のはどうなのよ?)」
「でも、断られ続けたのじゃ」
「ふ〜ん、何でかな」
たぁちゃんはフフっと笑うと僕を見た
「その理由がの、ワシを本気にさせたのじゃよ」
「へぇ…何だったの?」
「二宮家の後継ぎだから、じゃ」
「え?」
「忍はの、ワシにこう言ったんじゃ『私は愛人にはなれません。本気じゃないと、人を愛せません』っての」
「……」
たぁちゃんは深く椅子に腰かけて、眼を瞑った
「…ワシは、本気で惚れてしまった…
じゃが、ワシに二宮の家を捨てる事なんか出来ん…
それを見て、しのぶがの『たぁちゃんが家を捨てられないなら、私が自分を捨てます』と言っての…」
「……」
たぁちゃんのシワシワの目尻に、涙が滲んでいた