第7章 思い出の別荘、の巻
僕は一個深呼吸して電話に出た
「……もしもし」
『あ、また泣いてた』
開口一番これだもの(笑)
「うん、泣いてたの」
『アンタ、何時も泣いてるよね…そのうち、干からびるよ』
「そしたら、お水でもかけてよ、ニノ」
『そんなんで復活すんの?』
「うふふ、わかんない」
ニノとの何でも無いおしゃべりは
僕が、楽しい気持ちになれる、数少ない瞬間だった
「ところで、なんか用事?」
『なんか用事がないと電話しちゃいけませんか?』
「そんなことは、ないけど?」
『まあ、ありますけどね、用事』
「あるんじゃん(笑)」
『…あるんです、けどね』
「…?」
珍しくニノが言いにくそうにしている
…なんだろう?
「…ニノ?」
『…鍵を…』
「鍵?」
ニノは、もごもごと言いにくそうに言った
『いや、潤くんにね、確認したら…大野くんが持ってるって言うから…鍵』
「…なんの?」
『ん?……だから、その…別荘の』
「あぁ…」
何だ、そんな事か
「鍵ね、持ってるよ?
最近ずっと行って無いから……あるけど、ちょっと、探してみる」
『うん、ゴメン』
「…鍵返してもらうのに、謝る必要ないでしょ?」
『…うん、ゴメン』
そっか、それで言いにくかったのか…
…潤くんが結婚してから、一度も行ってないからね…
その事を…気にしてくれてたんだね