第7章 思い出の別荘、の巻
「今度、何時来るの?」
「何時帰って来るの、だろ?」
僕の部屋から帰る間際
そう言って潤くんが、僕を抱き寄せる
僕は、そんな御座なりな抱擁をする彼のカラダを
押し返して離した
「…その香水の匂い、キライ」
「…智」
“奥さん”が、潤くんにプレゼントした香水
潤くんは何時も、家に“帰る”ときに、その香水をつける
僕の潤くんが
僕のモノでは無くなる瞬間
「智、ごめん…」
「早く出てってよ、その匂い、キライなんだってば」
「……」
潤くんがその時どんな顔をしていたのかは、解らない
だって僕は、ずっと潤くんに背を向けて、真っ白な壁を睨みつけていたから
「……また、来るよ」
「…うん」
潤くんが出て行くのを背中で感じながら、僕は今にも駆け出したい衝動を必死に堪えていた
“行かないで、潤くん…行っちゃイヤだ”
声に出来ない想いで、喉の奥が熱くなる
重苦しいドアの開閉の音を聞き届けて、僕は床にへたり込んだ
だらしなく涙が頬を伝い続ける
「…行か…ないで……行か…ないで…よ……」
僕はとうとう床にうつ伏せてしまった
「…っく……潤くん……潤くん……戻って来てよ……」
どんなに酷いコトされたって構わない
潤くんになら、この身体を壊されたって構わないんだ
だからお願い
何でもするから
何でも、言う事を聞くから…
「……独りに……しないで……」