第39章 let's クリスマスパーティー!、の巻
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(智くん……大丈夫かな?)
俺は、松本くんと奥さんが仲良さげに去って行った方をぼんやりと見ている智くんの横顔を見詰めた
(奥さん、二人目出来たんだな…おめでたい話しだけど、でも…)
自分の腰にしっかりと抱き付いている智くんのお腹に視線を落とす
(…何も、今…)
「潤くんと奥さん、仲が良さそうで良かった///」
しばらくぼんやりと二人が去って行った方を見ていた智くんが
にっこりと微笑みながら俺を見上げる
その表情の中に、哀しい影は見て取れなかった
でも
智くんが心配だった俺は、ちょっと躊躇しながらそんな智くんに訊いた
「……智くん、大丈夫?」
「何が?」
「何がって…」
赤ちゃんがダメになってしまってからまだ間もないと言うのに
元彼の奥さんの妊娠を知って、智くんが少なからずショックを受けたのではと思って大丈夫かと訊いたのだけれど
…智くんが、あの子のことを口にしない以上、それを言う訳にもいかず
結果、言葉に詰まる
智くんはそんな俺の様子をじっと見詰めてから
静かに小さな声で言った
「…羨ましいな、って思うよ、そりゃ」
「……え?」
「…でも、良いんだ…僕には、翔くんが居るから」
「……そっか」
「うん」
何が“羨ましい”のか明言しなかった智くんの口から
その事が、それ以上語られることは無かった
まだ、その事を言うのも…考えるのも辛いのだろうって、そう思って
俺も、それ以上は何も言わなかった
「あ〜あ、やっぱりニノ達にも来て欲しいなぁ…お店、休めないのかなぁ?」
「ん〜、そうだなぁ……母さんにパーティーを昼からにしてもらう様に言ってみようか?
そしたらちょっとは顔出せるんじゃない?
ほら、松本くんだって早めに帰りたいんだろうからさ」
「そーだね、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ、まだ日があるんだから
それにみんな、その日は予定入れてないハズでしょ?」
「そーかなぁ」
ちょっと切ない気持ちをお互いに感じつつ
俺たちは、来週に控えたクリスマスパーティーの話しをしながら
肩を寄せてしっかりと手を繋ぎ合い、混雑したデパートの中をのんびりと歩き出した
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