第6章 浮気は男の甲斐性? の巻
.
そして智くんは、俺の手を握って自分の頬に押し当てると、眼を瞑った
「こんなコトさせるのは、翔くんにだけ」
「……智くん」
頬に当てた俺の手に、ちゅって、キスをする智くん
「僕に、触ってイイのは、この手だけ」
「……」
何があったのか解んないけど
何があったのか想像はつく
…でも、言いたくないんだね?
「そんなの、当たり前じゃん」
「うふふ、そうだね」
智くんは、大丈夫だって、言った
「絵、描き終わったの?」
「んーん、まだ」
だから、訊かないね
「じゃあ、待ってるから、描いててイイよ」
「そう?じゃあ、キリのイイトコまで描いちゃうね」
智くんが穏やかに笑ってるから
「うん、見ててもイイ?」
「もちろん、イイよ(笑)」
智くんを、その笑顔を
…信じてるから
だから、何にも訊かないよ…智くん
それから智くんに連れられてアトリエに行って、俺は智くんが絵を描く姿を眺めていた
真剣にキャンパスに向かう智くんは、それ自体がまるで一枚の絵画の様に美しくて
俺は飽きることなくその芸術品を眺め続けた
.