第24章 初ガチ喧嘩、の巻
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「いくら何でもそんな言い方は無いんじゃないか
それに、間違いなく智と俺がココで会ったのは偶然だ」
「そんな偶然なんて、いくらでも作れるよ」
俺は、冷静に俺を宥める松本くんを睨んだ
「例えば」
(……止めてくれ……)
「忘れられない昔の恋人に逢うために」
(……頼む、この口を……)
「二ノのお爺さんトコ行くふりをして」
(……頼むから止めて……)
「偶然を作るために、ココに通ったりしてさ!!」
(……誰か止めてくれ……!!)
──ぱんッ
言いたくない台詞を垂れ流す俺の頬を、衝撃が走った
「…………」
ジンジン痛む頬を押さえて、その痛みを齎した手をギュッと握り締めて涙を流す君を見る
智くんは、ふるふると震えながら、キッと俺を可愛く睨んだ
「………しょ、くんの………ばか///」
「………智、くん………」
「翔くんの、ばかぁっ!!/////」
智くんは泣きながら叫ぶと、くるりと後ろを向いて走り出した
「あっ!大野くんっ!!」
二ノが慌ててその後を追う
だけど俺は、金縛りに遭ったように足が固まってその場を一歩も動けなかった
(………俺………何言ってるんだ………智くんに、なんてヒドいことを………)
「お互いに想い合って居ても……お互いの気持ちや考えを全て理解するのは
……難しいよな」
「え?」
思い掛けない松本くんの優しい声に驚いて振り向くと
松本くんが手に持っていた智くんの忘れ物を俺に握らせた
「だからさ、解り合えてるなんて思わないで、ちゃんと口に出して思っているコトや疑問をぶつけ合わなくちゃダメなんだよな…
…俺はソレが出来なくて、アイツを手放す羽目になっちまった」
「…………」
「あんたは、俺と同じ轍を踏むな」
松本くんは、俺に握らせた智くんの忘れ物をポンと叩くと、哀愁を漂わせながらふっと笑った
「……やっと、心から幸せそうな顔して笑うようになったんだ……
……その笑顔を、守ってやってくれ」
松本くんはそう言い残すと
ビジネス街へ颯爽と去って行った
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