第5章 不完全で不器用な
腰を突き上げながらぐいっと頭を寄せて口付ける。どちらからともなく舌と舌を絡め合った。
「さくら…さくら…ん」
「万…次郎、ん、ふ…っ」
目を薄く開くと、気持ち良さそうな顔で俺を求める彼女が写った。
口端から滴る涎を舐め取ってやると、ピクリと反応した。
大事に、たまに激しく、そして愛情が伝わるように抱き続けた。
「はぁっ、さくら…もうやべぇかも…」
「あっ、うぅ…出して…出して万次郎…っ」
「出すぞ…っ愛してる、愛してるさくら…」
「私も…っ、愛してる…死ぬまで愛して」
「当たり前だろ…死んでも愛するから、傍にいてくれよ」
「うん…っ」
「ん、出る…」
うねるような膣の動きに身震いし、俺は射精した。それに対し一滴も残さず搾り取るように更に締め付けられた。
呼吸を整え繋がったまま彼女の顔を見ると、涙がポロポロ流れ落ちていた。
「どうした?痛かったか?」
「違うの、嬉しくて…ごめん、変だよね?」
「変じゃねぇよ?俺も嬉しい」
「…私、万次郎と一緒に乗り越えてみせるからね」
そう言った彼女は以前のような満面の笑みで、その顔を見る俺の目からも涙が溢れ、重力に従ってポタリと滴り落ちた。
「オマエ、また泣きながら笑ってんのな」
「万次郎だって泣いてるのに笑ってるじゃん、変なの!」
二人で震える声で涙を流す。まるでお互いの若過ぎた暗い過去、衝動、全てを洗い流してくれるような清くて幸福な涙だった。
「幸せだな」
「うん、幸せ」
額と額をくっ付けて笑い合うと、心と心が一つに混ざり合い溶け合っていった。