第3章 瞳に映るは
「いくぞオマエら!!!」
頭から流れる血を袖で拭い、俺は出せるだけの声を振り絞った。
その声に皆が俺を注視すると各々口元に笑みを浮かべ、ビリビリと腹の底まで響く雄叫びを上げた。
最後の力を振り絞り蹴りを繰り出す、アドレナリンが出ている俺は拳を振るい続けた。
「マイキー渋てぇんだよ、とっとと死ねや!!」
正面の敵を相手にしていると、ふとナイフが横目に写った。
「2人がかりで武器は卑怯だろ、テメェが死ねコラ!」
誰かがナイフを叩き落として、笑いながらワンパンで伸した後俺に向き直った。
「おいおいマイキー、コイツらぶっ殺す前に死ぬなよ?俺らがさくらちゃんに顔向け出来ねぇからな」
「大丈夫?マイキー凄い血だね」
「スマイリー、アングリー…。悪ぃ。助かった」
「マイキー君、こっちあらかた片付いたっす!」
千冬も顔に傷を付けながら駆け付けて来る。
「無理しないで下がってて下さい…っつーのは聞いて貰えなさそっすね」
「あぁ、最後までぶっ倒れてらんねぇよ。行くぞ」
「うっす」
前線から退いていた旧東卍メンバーは押されながらも底力を見せてくれ、30分も経つと関東卍會の連中は地に伏していた。
最後に春千夜と九井だけが残った。
彼女をボロボロにしたコイツらを目の前に、憎悪のあまり震える拳を握った。
「本当は…テメェらなんか殺してやりてぇ」
「クソ、殺せマイキー。オレらの負けだ…」
「でも殺さねぇ、俺はもうさくらが居るから堕ちねぇ」
「万次郎…!」
胸ぐらを離し床に転がすと、呼吸を荒らげながら彼女に近寄り、隣に腰を降ろした。
三ツ谷を見上げると傷だらけになっていた。必死に彼女を庇ってくれたのだろう。
「三ツ谷…守ってくれたんだな、ありがとな…。ここは俺が残る。サツも来るから皆は行ってくれ」
「マイキー!意識トビかけてんぞ!」
「ちょっと疲れちまった…さくら、顔見して」
「万次郎、万次郎!?」
「なに泣いてんだよ。オマエの、笑った顔が好きなんだよ…」
「今救急車来たよ!一緒に行くから、起きてよ…!」
「うん…起きてるから、笑って…」
「笑ったよ…?万次郎?」
「うん、やっぱ可愛いな…」
泣き笑いしている彼女の顔が俺の真っ黒な瞳に映った所で、ふっと視界がブラックアウトした。