第2章 恋焦がれた
大事な人全てと訣別してから二年後、俺は関東卍會というチームの総長になっていた。
周りは力を持て余した奴等が集まった。
俺自身も、自分が誰なのか、なんの為にこんなバカげた事をやっているのか分からず思考回路はめちゃくちゃになり、敵だと思えば拳を振りかざし、相手を潰し、荒んだ生活を送っていた。
「はー、今日も派手に暴れたなぁ!」
「なぁボス。」
「………。」
今日も一つチームを潰したあと関東卍會の溜まり場に戻り、チームの奴等がグダグダ駄弁っている。
他の者が嬉しそうに声を上げる中、俺は一人空虚感と孤独感に苛まれていた。
大事なもの全てを切り捨ててまで…度々心が折れそうな時、何度も寄り添ってくれていた彼女の心をズタズタに切り裂いてまで俺が望んだのは、本当にこんなものだったのか。
最早、『無敵のマイキー』という関東卍會の傀儡にしか過ぎないのでは無いか…そんな事を考えていた。
「なぁ、ボスって本当に女いねーの?」
「あ?なんだココ。んなもんいねーよ。」
「じゃあその指輪、なに?」
「……………。」
「俺に『マイキーが何人も女孕ませて堕胎させた』って噂流させたのも嘘なんだろ?なんの為に?」
幹部の九井に尋ねられる。オレは咄嗟にシルバーリングの着いた左手を隠した。
「九井テメェ、ボスに失礼な事聞いてんじゃねーよ!」
「あ?三途、テメェに話しかけてねーよ。」
「殺すぞコラ。」
「落ち着け春千夜。」
「すみません。」
「別に構わねぇ。これはサイズが合わなくて今更外せなくなっちまっただけだ。女の件も嘘じゃねぇよ。これ以上まだくだんねー質問あんの?」
「………。」
オレが冷めた目で睨むと二人とも押し黙り、それ以上喋る事を辞めた。
「明日はフリーだ。オマエら好きな事して過ごせ。」
「うっす。」
「今日は解散だ。」
「……。」
九井の猜疑心に満ちた目を背中に浴びている事も知らず、俺は溜まり場を出た。