第7章 雨の日の思い出(ルーク)
「うーん、美味しい!」
「おーうめーな。俺もこのみたらしってやつ、好きだ」
みたらしがたっぷりかかった作りたてのお団子を頬張り、舌鼓を打った。この国のお菓子はハズレがない。すでにお饅頭を食べた後だったが、別腹というものは本当に存在するらしい。
恋人のルークと私は外交官としてはるばる紅玉国に旅行に来ていた。せっかくだからと今の私たちは観光で紅玉国を満喫している最中だ。甘味処の店内にはお団子を焼いているような、嗅いでいるとお腹が空く匂いが充満している。
ザァーッ
突然騒がしくなった外を見ると、土砂降りの雨が地面を叩いていた。せんべいと追加のみたらし団子をお持ち帰り用に包んでもらい、お金を払ってルークと屋根の下に出る。
「急に降ってきたな。傘もねーし、しばらく雨宿りするか」
そんなルークの言葉が遠くに聞こえるほど、私は目の前の景色に見入っていた。
眼前には青色の紫陽花に囲まれた階段が門に繋がっている、幻想的な光景が広がっていた。土砂降りの雨は紫陽花と周りの木を濡らしてチラチラと光っている。
私の様子に気づいたルークがそっと私を上着の中に抱き寄せた。
「ルーク……私、今日の事一生忘れないと思う」
そう言ってルークのぬくもりの中で幸せを噛み締めた。