第3章 暴走
え…?
玄関に背を向けたまま、私は動けなくなってしまう。
「内村さん…、おれ、嬉しいです」
そんな呟きが聞こえた瞬間、私は後ろからきつく抱きしめられていた。
伝票が床に落ちる。
え、うそっ、これはダメ。
「おれ、ずっと内村さんのこと…」
続く言葉を聞いちゃいけないのに、期待して、胸のドキドキが止まらない。
私を抱きしめる腕に力が込められた。
「内村さんのこと、好きだったんです」
ああ、ダメなのに。
嬉しすぎる。
両想いだったなんて!
ずっと夢見てたたくましい腕と、半日分のキツイ汗のニオイに包まれて、私は恍惚に震えた。