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満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】

第43章 「そう言うことは早く言え!」※《宇髄天元》




物心ついた頃から前世の記憶があった。
鬼殺隊、蝶屋敷、鬼、柱。
曖昧な記憶を辿って繋げていって、一本の自分の体験した記憶となって繋がったとき、今世で前世の記憶があるなんて、なんて自分は運が良いのだと神様に感謝した。
波奈は鬼殺隊の中でも位は1番下で弱かったし、鬼は怖かった。
それでもあの怖かった前世の記憶を背負うということは何かしら意味があって生を受けたのだ、と波奈は思ったから。

幼い頃からずっとある人を探していた。
派手な髪飾りをカラコロ鳴らして、腕や手首にも金色の装飾を纏い、左目は梅の花模様の化粧をしている。
自信過剰に見えて、実は己の能力を細やかに分析していて、胸の内は案外謙虚だと波奈は知っていた。
上弦の鬼との死闘により片目と片腕を失うものの、最終決戦で鬼殺隊をずっと支えた。

波奈は最終決戦であっさり命を落とした。
己の弱さは不甲斐なく後悔はあったけれど、
彼の腕に抱かれながら、幸せな最期だったと思う。

「来世は一緒になろうぜ。お前をぜってえ見つけ出してやるから」

ぽたぽたと溢れ落ちる宇髄の涙を最後に拭ってあげたかった。
どうか泣かないで欲しい。
この人が悲しみと後悔に暮れて眠れない夜が来ませんように。
どうかこの先鬼のいない世界で幸せになってくれますように。
できれば来世でも、会えますように。

願いは来世にまで引き摺り込んでしまって、いまだに彼を探している。

名前を宇髄天元と言った。


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