満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第39章 Trick but Treat※《宇髄天元》
それが去年のことで、今年は悪戯をされないようにちゃんとケーキだって用意した。ちょっと良いお肉を買ったし、スープもサラダも冷蔵庫だ。
もうすぐ帰ってくるだろう恋人の、バースデーを祝う準備は整っている。
「ただいま〜」
「おかえりなさい!」
待ちかねた恋人を玄関で出迎える。
両手に紙袋をぶら下げていて、大荷物だ。
「…今年もすごいです、ね」
「あーー重い。全部やる」
どさりと床に放り出した大きな紙袋の中身は、可愛いラッピングがされたさまざまなプレゼントだ。勤め先の学校の生徒からのプレゼントだと、大体予想はつく。
バレンタインと誕生日は、いつもこんな感じで大荷物で帰ってくる。波奈と付き合ってからというもの、受け取らないようにしているそうで、少なくなっているそうなのだが。
毎年処理に困るのだが、仕方ない。
こんな見た目で、おまけに大雑把に見えて細やかな気遣いができる彼だ。…きっとこのプレゼントの中には、勇気を振り絞って意を決して震える手で宇髄先生に渡した生徒だっているだろう。
…そもそもわたしがそうだったから。
「…で、お前からのプレゼントはねえの」
複雑な気持ちで紙袋を見つめていると、宇髄さんが後ろから顎を波奈の頭に乗せてぐりぐりしながら聞いてきた。
「もちろん、ありますよ!」
「やった!…あ、そうだ」
両肩を掴まれて、ぐりんと向き合わされる。
2メートル近くある彼の顔を見上げて見ると、ニコニコと笑っている。
この顔…っ!いたずらっ子の顔だ。
波奈は身構えた。
「トリックアトリート!」
と言うもんだから、波奈は得意げにへへんと笑った。
「残念でした!今日はケーキあります!」
「…うん?そーなの?俺の?」
「じゃーーーーーん!」
冷蔵庫を開けてどうだと言わんばかりに見せた。
作成に時間がかかったが我ながら良い出来栄えだ。
アイシングしたクッキーは、宇髄さんが考え出したむきむきねずみのキャラクター、年齢の25の文字。派手にデコレーションしたケーキ!
「…おお、すげえ…まじか」
「まじですよ」
「…ちょっと凄すぎて言葉でないわ」
ええ、そんな感動してる。口を抑えて目を見開く宇髄さんは、珍しい。
「…まじで嬉しい。時間かかっただろ。ありがとう」