満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第34章 くらし、始まる※《宇髄天元》
何度でも言う。嫁に来い、菜子。
今まで散々鬼殺隊に尽くしてきたんだ。
自分の幸せだけを考えてもいいんじゃねえか。
日の光に照らされた桜の花びらがきらきらと舞う頃、めでたく鬼殺隊は解散した。
たくさんの仲間の命と引き換えに、平和な世にはなった。
されど日常にはすぐに戻れるわけではなく、負傷した隊士や隠しなどの治療で、ここ蝶屋敷は昼夜問わずに何かと騒がしかった。
痛みと、心の傷で泣き叫ぶ声が、療養部屋から何度も聞くたびに、波奈は耳を塞ぎたくなった。
深く考えるのを辞めて、闇雲に手や身体を動かした。そうすれば楽だった。
悲しみに打ちひしがれるよりも、やるべきことはたくさんあった。
師であり今はなきしのぶさんが作っていたように同じ手順で、材料をすりつぶす。その薬を受け継ぐことが波奈なりの弔いであった。