第15章 始まりの過去1
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彼は、僕が部屋から出るのを見ると、きっちりとした感じで挨拶をしてきた
「初めまして、僕は、生徒会長の松本潤 です」
「どうも…大野です」
「産休に入られた美術の先生の、代わりに来られた先生ですよね?」
そんなの、どこで情報仕入れるんだろう?なんて思いながら、僕は
「そうです」
とだけ言った
彼はソレを聞いて暫く黙り込むと、にんまりと笑った
「文化祭の準備で色々お世話になると思いますが、宜しくお願いします」
そう言って右手を出す松本くん
「どうも…宜しく…ね?」
僕は差し出された手を握った
彼は僕の手をじっと見ている
(…だから、穴が開いちゃうってば)
暫く僕の手を凝視していた彼は
「…では、失礼します」
と言って、名残惜しそうに手を離した
(………へんなの)
それから
家に帰った僕は、採用の報告がてら
僕の恋人で、当時一緒に暮らしていた(と言うか、僕は居候だったんだけど)教授に
濃い顔の生徒会長の話しをした
そしたら教授に
「それは、彼に惚れられましたね。智君は、美人だから」
って、言われた
まさか、いくら男子校だからって、男の先生に一目惚れなんて有り得ないよ
…って、その時は思ったんだけど
新学期が始まって、僕が大学と高校を行ったり来たりで忙しい毎日を送っている中
松本くんは
まるで生まれたてのひな鳥が、母鳥を慕うように、僕の後をついてまわっていた
いくら僕でも
流石にこれは…って思ったよ
どうやら、教授の勘のが正しかったみたい
……やっぱり、年の功かな?
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