第8章 想い人
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猛ダッシュで智くんのマンションに辿りついた俺は、速攻で彼の部屋のインターフォンを押した
『…はい』
少し間が空いて、君の声がする
『どうぞ』
入口のドアが開く
智くんの部屋…あの日以来二度目
無機質でガランとした、君の部屋
広くて寂しい、あの部屋で、君が独りで泣いている
俺は、君の部屋へと急いだ
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「智くん!来たよ!」
玄関の戸を開けて部屋へ入る
そこには、潤んだ眼を真赤に泣き腫らした君がいた
智くんは、黙って俺の胸に抱きついた
肩が、小刻みに震えてる
「大丈夫?とりあえず、座ろっか?」
智くんは小さく頷くと、俺に促されてソファーに腰掛けた
俺は智くんの隣に座って、震える肩を抱き寄せた
智くんは黙って俺の胸に顔を埋める
相変わらず、ガランとした寂しい部屋
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—……ココデ
—彼ト…アイシアッタノ?
—ソノ身体ヲ、預ケタノ?
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急に胸にヒヤリとした感覚が押し寄せる
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—何ガアッタノ?
—ドウシテ俺ヲ呼ンダノ?
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訊きたい事が、言葉に出来ない
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—俺ハドウスレバ…
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静寂を破って、智くんが静かに囁いた
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「翔くん、僕を……
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……抱いて」
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