【MARVEL】This is my selfishness
第5章 5th
変なことは…しないししてないはず…。
『バッキー?』
横から顔を覗き込まれてハッとする。
『どうかした?』
ミアが俺の顔とバーテンダーの顔を交互に見る。
バーテンダーはミアに微笑みかけてその場を離れた。
「いや…」
『そう?はい、これ。注文したでしょ』
「君が作ったのか?」
『まさか。わたしは運んできただけだよ。厨房のルドルフさんの料理は何でも美味しいんだよ』
『お酒を飲まないわたしでも楽しめるくらい』と付けたす彼女に返事をして1口つまめば、確かに美味しい。
『ロンさんと何話してたの?』
「ロンさん?」
『バーテンダーさん。ロンバルドっていうんだけど、通称ロンさん』
「…特に何も。座らないのか?」
ミアはずっと立ったままだった。
『わたし仕事中だから』
そりゃそうか。ましてやホステスじゃないミアは座る理由もない…
『それにこのカウンターの椅子、わたしにはちょっと高くて座りにくいんだよね』
「ふっ」
確かに身長が高くないミアにはこの椅子は高そうだ。
冗談なのか本気で言ってるのかはわからなかったが、つい笑ってしまった。
『バッキーはこういうお店似合うね』
「そうか?普通だろ」
『その普通に当てはまらない人もいるんだからね』
むに、と唇を突き出して拗ねたような顔をするもんだから、つい掴みたくなる。
『ンっ?!』
「君もプライベートだったら似合うさ」
『ンッンー!』
実際に唇を掴んでやったらミアは慌てて俺の腕を外そうと両手で俺の腕を掴む。
『ッハ、何すんの』
「つい掴みたくなった」
『もう』
掴まれた唇をさすりがら非難の目を寄越してくるが全く怖くもない。
「ミアちゃん、これあそこの席の方にお願い」
『あ、はい!』
『じゃあね、』とロンバルドに指示されたものを運びにミアが仕事へと戻った。
その隙にロンバルドが俺の前に戻ってきた。
「ミアちゃんのこと、どう思ってる?」
「どうって…隣人だ」
2人しか住んでないアパートの隣人。
2人しか住んでないが故に隣人だけれどそれ以上に少し特別に感じてるだけだ。