【MARVEL】This is my selfishness
第11章 小話2
その後も他のキャストさんやロンさんルドルフさんたちと話しているといつの間にか近くにバッキーがいないことに気づく。
ホールを見渡してカウンターの警備員として座っている席にいることのを見つけて近づいていく。
『トリックオアトリート!』
「ふっ…参ったな。何も持ってない。悪戯するか?」
『ふふ、ううん、しないよ。だってバッキー、くすぐりも効かないじゃない』
どんな悪戯をすればいいか思いつかないもの。
バッキーが座る横に頑張って腰掛けると柔らかく微笑んでくれる。
「もう他の奴らとは話し終わったのか?」
『ん〜終わったって言うか、バッキーがいないなって思って』
「そうか。…何か気になることでもあるのか?」
『え?』
「気落ちしてるように見える」
そんなに顔に出てただろうか。
本音を言うとやっぱり写真撮られるのは嫌かな、と考えていた。
普段から写真を撮ってなかったことに気付いてから勿体ないことをしたなって思うのと同時に、今の狼の仮装をしてるバッキーを撮っておかないのもあとで後悔しそうと思った。
「俺になにか出来るか?」
わたしの顔を覗き込むようにして言う。
……甘えてしまおうかな…。
『写真、撮ってもいい…?』
「写真?」
『うん…でもさっきアレックスが撮ろうとした時、断ってたでしょ?だから嫌かなって』
やっぱり断ってたのを知っといて聞くのは良くなかったかな、と後悔の波が寄せてきて視線が下がっていく。
「君になら構わない」
その声にパッと顔を上げる。『いいの?』と改めて聞くと「ああ」と答えてくれた。
『じゃあ、ちょっと失礼して───』
スマホのカメラ機能を起動して横にいるバッキーに向ける。ちょっと近すぎるかな?光の加減はちょうど良さそう、と考えていると─────わたしのスマホがわたしの手から消えた。
「ツーショットだろ」
そう言いながらまだわたしがカメラを見ていないのにシャッターをタップした音がする。
ち、近い……!
ツーショットと言って、バッキーの顔が斜め上のほぼ真横に……!!