【MARVEL】This is my selfishness
第10章 9th
ちりとりからガラス片が落ちないように気をつけながらカウンターの裏へ持っていき、代わりに雑巾を手に戻って零れた水を拭き取れば元通りになった。
『すみませんでした、お客さんを怒らせてしまって』
遅くなったが小声でキャストさんに耳打ちすると、「いいわよ、あのお客さん面倒になってきた頃だったし。水だってロンさんの指示でしょ?」と言われる。それに対し、頷くと「それなら判断も間違ってないしいんじゃない?ちゃんとお金は払ってもらってたしね。グラス代を弁償させたいところだけど」と言うとキャストさんは立ち上がって待機スペースへと去って行った。
水を持って行った方がいいかは自分だけで判断せず、最終的にロンさんに聞いてから持っていくことになっている。今日もそうだったけど、そういうことに怒るお客さんだったようだ。
とはいえ、あのままお酒を飲ませる訳にもいかない。
「やっぱ貴方がいてくれて良かったわ」
片付けが終わり、カウンターに戻ると先に戻っていたバッキーにロンさんがニコニコとそう言っていた。
「まさか本当に出番があるとはな」
「いるのよ、ああいうお客さん。たまにだけどね。今まではああいう時には私が出て行ってたんだけどやっぱり強面の人が行った方が一発ね」
「……あんたも強面だろ」
「なんだって?」
バッキーがボソッと言った言葉にロンさんがギロリと睨みをきかせると、バッキーはわたしを見て微笑んだ。
閉店してからガラス片含め、ゴミを片付けているとアレックスが近くにやってきて手伝ってくれる。
「バーンズさん、すごいね!」
『うん?うん、すごいよね』
あのお客さんの時のことだよね?と聞くと「もちろん」と興奮したような返事が返ってきた。
「頼りになるな〜。やっぱ用心棒というか警備員の人がいるだけで安心できるね」
『そうだね。でもアレックスが行ってもいいんだよ?』
冗談交じりに言うと「僕には絶対無理!!」と困ったようにしながらも笑った。
その笑顔に一瞬、影が差したように見えたのは気のせいだろうか───────?
To be continued...