【MARVEL】This is my selfishness
第10章 9th
「でも私は恋バナ好きなの。だからどんな話でもして欲しいわ。泣かれるくらい、大したことないんだから。貴女の気持ちは貴女だけのものだけれど、1人で抱えているだけじゃ苦しくなる時もあるでしょう?そんな時は私に吐き出してね」
ただ恋バナしたいだけじゃないのよ、とお茶目な笑顔でわたしの鼻をつつくケリーさんは営業中のホールで見るような色気はなく、ただただ可愛らしい素敵な女性だった。
「まだまだお話したいけど開店準備しなきゃよね、引き留めてごめんなさい。またあとでね」
わたしの頬を軽く撫でてウィンクしていくケリーさんを見送って、荷物をロッカーに入れた。
いつもと変わらない日数しか空いてないのに、アレックスの顔を久しぶりに見た気がした。多分、休みの間の出来事が濃すぎたからだ。
アレックスはわたしが誰の主催のパーティーに行ったのかを知らないようで、何も言ってこなかった。それに少し安堵する。
ロンさんやルドルフさんみたいに心配してくれるのはとてもありがたいけれど、あまりたくさん気遣われると申し訳なくなってくる。
それよりアレックスはバッキーがHeavenの不定期警備員になったことに驚いていた。
「えっ、今日もずっと居るのかな〜って思ってたけどそういうことだったの?」
『ロンさんから聞いてなかった?』
「サプラ〜イズ」
驚くアレックスの後ろから、話を聞いていたロンさんがパァ〜と手をキラキラさせる動きをしながら言った。
「いや、どういうサプライズですか、それ!」
「人生、時には驚きも必要でしょ?」
「そうだとは思いますけど、」
「俺がいたら何か不都合なのか?」
間に挟まれるようにカウンターに座っているバッキーが口を挟んだ。
「えっ?いや、不都合とかでは…」
「ミアちゃんとのお菓子のやり取りも程々にしないと、警備員さんに目をつけられるわよ」
「なんでですか〜!」
ロンさんとアレックスの和気あいあいとしたやり取りが面白くてつい笑ってしまう。
ロンさんの人柄もあるけれど、アレックスもなかなかやっぱり人懐っこい性格をしているようだ。